制作にはコミュニケーションが大切

番組の制作現場ほど人との関わりを大切にしなければいけない現場はありません。それぞれの仕事のすべてが繋がっていて、それぞれのスタッフ、演者が連携することではじめて成立するものが「番組」だからです。

コミュニケーションとは「馴れ合い」ではありません。ただ声を掛け合えばいいというわけではありません。「話すこと」だけがコミュニケーションではないのです。それぞれの仕事と仕事が関係し、互いに作用しあい、各スタッフが役割をまっとうできていること自体が「コミュニケーション」になります。誰かが手を抜き、それを言葉で謝罪したところでそれは「コミュニケーション」ではないのです。

その番組制作に関わる全ての人が自身の仕事に対して責任と誇りを持っていて、関わる他のスタッフに対して「仕事でそれを示せる」ことが理想であり、役割をまっとうして各タスクがリレーされること、そしてすべての取り組みが調和してひとつの「成果」になること自体が「仕事」です。難しいのですが、人柄であるとか真面目であるとか、関わる人の「パーソナリティ」はどうでもよかったりするのです。大切なのはその「仕事」であり、その仕事の結果なのです。

それが現場でのコミュニケーションであり、仲良くしようだとか、仲間意識などというものは仕事がまっとうできていて初めて成立するものなのです。なぜならば、関わるスタッフのそれぞれが違う仕事をしていて、それぞれ違う役割を持っているからです。何かひとつでも欠けてしまえば、その時点で誰かに迷惑がかかるからです。そのような状態では人間関係もなにもありません。仲良くクラブで集まっているわけではないのです。自分の生活の糧を得る「仕事」を行うためにそこにいるのです。

それはどのような職場でも同じことであるはずなのですが、ただ制作現場とは違って「リカバリー」の体制が整っていたりするものですが、すべての仕事がひとつに集約される制作現場では、ひとつのミスが重大なトラブルに発展してしまうこともあります。だからこそ、仕事がコミュニケーションであり、仕事で互いを感じ、信頼するということになるのです。番組の制作現場は独特の空気をはらんでいます。さまざまな人が同時に、ひとつの番組に対して尽力する様子は、「異種格闘技戦」の様相を呈しているのです。そのような現場で「自分が関わる意味」を見いだすためには、自分の役割をしっかりと把握することが大切です。把握した上で、それが他の人のどのような部分に関係するのかを見極めることが大切です。

それがコミュニケーションです。ただ話せばいいというわけではなく、仕事を仕事としてまっとうすることが大切で、その仕事が全体のなかでどのような位置にあるのか、何が重要なのか、ミスをすれば誰が迷惑を被るのかを、しっかりと把握しておくことが必要なのです。そうしてまっとうした仕事の結果は、ひとつの番組として結実されるものであり、全員が最善を尽くした結果が素晴らしいものであることが、コミュニケーションの成果というわけです。「目的」がぶれた瞬間に、コミュニケーションは成立しなくなります。何のためにその仕事があるのかを知ること、それがコミュニケーションの大前提なのです。